肉を噛みたい。

おもにいぬになりたいひとのしをかいてます。

創作

逃げた先の泥水

届きそうで届かない 決して捕まえることの出来ない水たまり 届いてしまったその手の中には 濁って汚れた自分のこころの泥水 捕まえられずに居たならば きっとまだ追いかけていたはずなのに 捕まえてしまった、今となっては ただただ呆けて見つめる手のひらの…

水底のカヌー

1. あれはいつの出来事だったのだろうか。りっちゃんと二人であのカヌーを見たのは。 昼と夜が入り交じった空にクタクタに溶けてしまいそうな一艇のカヌーは、まるで私達など、ここに居ないかのようにゆっくり、ゆっくりと空を滑っていった。 「沙希、あれ…

はみがき

朝起きて歯を磨く 朝ごはん食べて歯を磨く 昼ごはん食べて歯を磨く 夜ごはん食べて歯を磨く 毎日繰り返す大切なこと 朝起きておはようと言う 行ってきますと言う 仕事から帰ったらただいまを言う そして、おかえりと言う 寝る前にはおやすみ、と。 全部大切…

混沌

混沌として整然とした感情に 押し潰されて 流れていく 貴方を諦めたくない と 口にする事さえ ままならない 今の自分に 貴方を掴む 勇気がない のに 離したくない のに 逃げ出したい のに 逃げたくない 簡単なことだ ただただ 好きなのだ たった一人のあなた…

しがふたりをわかつとき

いつかその時が来たら と君が言う その時が来たら笑って見送ってくれ 君が泣くと哀しいから 君はなんて大馬鹿野郎なのでしょう 君の死は悲しい 君の死は尊い 君の死は愛おしい 君の死は 死にたくなる

あの日の林檎

甘く甘く そして苦い 林檎 初めて私を見つけてもらった 苦くて甘い、居場所をくれた あの日くれた林檎は今もそうっと包んで宝箱 奥底に滲み出す猛毒の林檎の甘い甘い汁 宝箱は甘い猛毒の汁でだんだんくすんでいく じわり じわり じわ り じわ り じわっ 林檎…

いつかのラブレターは燃やしてしまった

いつかのラブレターは燃やしてしまった あんなに想いを込めて書いたのに 燃やしてしまった 耐えられなかったんだと思う 自分の想いの重さに 自分の調子の良さに 一生 というの時間の長さに ビビって引っ込めた左手 覚悟が決まらない それでも 絶えず貴方を思…

眩い朝日に燃え尽きる背中

まだ温かい布団の中、ひとり貴方を思い出す。 燃え盛る炎の中でただただ私を抱きしめている。 体の全てが燃えちぎれて 動かないはずの両手で抱きしめ合う。 途切れる呼吸 繋ぐ互いの口付け 視界を曇らす涙 確かに感じた互いの体温 ひとつの大きな炎となって …

目玉焼きになりたい

目玉焼きになりたい 私と2人写る写真はまるで目玉焼き 2人して真白のTシャツ 逃げる笑顔と それでも嬉しそうな笑顔とが くっついてとけあって まるで双子卵の目玉焼き きみときみとは溶け合わず しろみだけが溶け合って一つに なったきがした ただずっと 溶…

こしょこしょばなし

つかまえた 君の瞳のその奥に 隠したはずのキラキラが 零れて落ちて 拾い集めたキラキラの 内緒話が聞こえるよ あまいキラキラ からいキラキラ もっとあまいキラキラと もっともっとあまいキラキラが 私の耳を擽るように 囁いて 今夜も貴方を想って 夢をみる

窓の下

シーツのシワ うろこ雲のうらがわ 本当はこっちが表かな 海の岩場のような鋭い雲 濃い朱色から紅色に 遠くでは紫になる空の上雲の上 窓の下には町灯がちかちかぽわぽわ 大きな川や山に沿ってあかりが滲む 街は金色 深緑のカーテン 裾野には夜色の川 ひかりの…

小指にキス

右手の小指にキスをする あなたの匂いに心が沈む 匂いに沈むと温かさで眠たくなる それで、とにかくキスをしたくなる 必ず、する 必ず、小指にキスをする なんの意味もないけれど それが私の隠した気持ち きっと溢れて すでに見つかっているんだろうけど 右…

aで始まってiで終わる

そんな大げさな そんなやっかいな そんな優しさで そんな苦しさで 私を蝕む まるで呪い まるで憎しみ まるで悲しみ まるで、まるで その言葉を飲み込んで 踊らされて ずっこけちゃって そしたらあなたが拾い上げて 結局こぼしちゃう たったひとつの

稲妻

視界の端を小さな稲妻が走り抜けた 小さな、まるでトビウオのような一瞬の けれど強かな光だ その瞬間に思い出す あなたの眼が私を貫いたあの光 あれと似ていた だから急に、苦しくなって 愛おしさが込み上げた 苦しいと気持ちいいは紙一重だった その息苦し…

何度も同じ夢を見る あなたに首を絞められて死ぬ夢 どうせ死ぬなら貴方に殺されたい そうじゃないなら自分で死ぬ そう言って夢の中の私は貴方に 私を殺すことをお願いする あなたは優しいので、私を殺す ごめんねと呟きながら目が覚める 寝覚めは最悪 当たり…

夏の暑さに沈む背中

ふと見上げる あの日もこんな空だった ふと俯く あの日もこの道だった 気がつけば季節は移ろい また夏が来る 夏に、なる 溶けてひとつ、またひとつ、 夏になる

満月

ふと見上げると、満月だった。 ただぼんやりと「今日は満月なのか」と思った。 先程まで貴方に触れていた右手には、 着替えなどの入ったカバンの取っ手が 握られている。 手が悴む寒さに舌打ちしながら、 貴方のいない右側を見ないふりをした。 まだ、そこに…

Good night.☪︎

触れてほしい 唇に 瞼に 頬に そのやわらかな唇で 触れてほしい 掌に 首に 胸に 触れてほしい 心に 触れてほしい ちいさな爪が 触れられぬもどかしさを 掻きむしる 濡れた頬に そっと優しく あたたかく 触れてほしい 貴方の唇で 今夜もあわく滲む 夜空を睨み…

光る魚

金曜の夜、私は魚になる。 両手のつめに重ねられた きらきらの淡いあおみどりの乳白色が 私を光る魚にしてくれる。それはまるで、鱗のよう。 昔読んだ鱗がにじいろのさかなの絵本を思い出す。 あの魚もきっと、きれいなきらきらなのだ。光る魚は自由に、好き…

流るる

全てはこの川を通る。 大きな川だ。 何もかも流れてゆく。 魚も蟹も草木も、舟も人も、全て。 色も。 朝陽が登って、夕陽が沈む。 それだけのあいだに、たくさんの色が流れる。 朝陽や夕陽は、ほんとうは だれの、涙なのだろう。 零れ落ちる光のつぶは、まる…

震え。

あなたの声に大きくふるえる。身体ではなく、心が。 溺れてしまいそうになる。降り積もるあなたの声に、溺れそうになる。降り積もるのはやがて溶ける雪ではなく、 私を絞め殺す柔らかな綿。あなたのその優しい感情の光の波は大きく渦を巻いて私を呑み込む。…

いきている

それはまるで雨のように私の心を濡らし、まるで夏の昼下がりの心地よい風が昼寝をする私の顔を撫でるように優しく撫でる。時には雷のように私の心を震わせ、時には真夏の太陽のように私の心を照り尽す。 雨粒に揺れる木の葉や、風にあおられる切りすぎた前髪…

貴方の色

貴方の色が好きだ。 それは誰にもない、貴方の色。 貴方だけの色。 なにいろでもないのだ。 その色は紛れもなく、貴方の色なのだ。 貴方に私は何色に見えているのだろうか。

息ができないほど

静かに息を潜めている。 私の心の奥で静かに息を潜めているそれは、生まれてからずっと一緒に来たそれは心の奥でずっとその時が来るのを覗っていた。 そう、私の心の中から「外」に出る日を。 私は知っている。 それが何であるかを。 私は知っている。 それ…

ふわふわ ゆらり

ふわふわ ゆらり きもちよくてふわふわ きもちわるくてゆらり 白か黒か青か赤か どちらかはっきりしない 世の中のたくさんの物事に 痺れを切らす けれど己を甘やかすには グレーの紫の薄ぼんやりした どちらでもない ことが いちばん丁度良くて そんな自分に…

この枷は、私が懇願してつけてもらったものだ。 唯一、この枷は彼方と此方を繋いでいる。 この枷のおかげで彼方へと行ける。 しかし、この枷の持ち主は、いつでも突き放せるのだ。 何故なら私自身が彼方から突き放されているので、この枷さえ捨ててしまえば…

きらきらを

あさになるときらきらがうまれる それはだれしもからうまれてくる きらきらだ きらきらはすごくさむいひにしかうまれない きらきらはすごくはれたひにしかうまれない ときどきよるにもうまれてくるが くらいのでよくみえない けれどつきやほしのこうこうとか…

ごみばこ

居場所ってなんだろうね。 どうやって作るんだろう。 人とのあいだかな? それとも自分の心の中とか? どうでもいいね。 そうやって、知らないふりして どうでもいいとかいっちゃって そしたら見なくて済むもんね? 自分が傷つけたひとの心をさ。 それでは質…

ピザまん

はふはふ ほかほか ちょっと濃いめのピザソース そんなに美味しくないけどよく伸びるチーズ 何となく食べたくなる でもそんなに好きじゃあない あなたは豚まんの方が好きだった 決まっていつも豚まんだった いつもはんぶんこしていたのに 今日は、今日から、…