肉を噛みたい。

おもにいぬになりたいひとのしをかいてます。

逃げた先の泥水

届きそうで届かない 決して捕まえることの出来ない水たまり 届いてしまったその手の中には 濁って汚れた自分のこころの泥水 捕まえられずに居たならば きっとまだ追いかけていたはずなのに 捕まえてしまった、今となっては ただただ呆けて見つめる手のひらの…

瞼閉じれば

あなたが 名前を呼んで お休みを言うとき あなたはきっと わたしの頭を撫でている そんな瞼のうらっかわ シングルベッド ひとり閉じた瞼のうらっかわ わたしもこっそり あなたの名前を呼んで おやすみを言う わたしもあなたを撫でている ありもしない犬の毛…

4年後のあなたへ

あの日の、死に損なった私ごめんね もうあの日決めた年齢まであと4年になってしまった 何も準備が整わないまま、あと4年だなんて 30までなら生きる そう決めて惨めな惨めな死に損ないの続きをしている あぁまた今日も死に損なったなあ、と何日も何ヶ月も、そ…

指先で触れるキスをして

心臓が、止まる。 何度もくれた愛しい言葉に、心臓が止まる。 きっとあの頃とは、感じ方は違っているのだけどそれでも間違いなく貴方の「かわいい」に心臓が何度も止まる。 背中の毛が燃えるような恥ずかしさと嬉しさが私の心をいっぱいにする。 星は私の手…

水底のカヌー

1. あれはいつの出来事だったのだろうか。りっちゃんと二人であのカヌーを見たのは。 昼と夜が入り交じった空にクタクタに溶けてしまいそうな一艇のカヌーは、まるで私達など、ここに居ないかのようにゆっくり、ゆっくりと空を滑っていった。 「沙希、あれ…

しし座流星雨

小一の、今頃のちょうど真夜中。 よく父親と母親の2人とも外出していて家に居なかった事があった。しし座流星群のピークを見極めに夜中に外出していたようだった。しかし私は夜中に1人でトイレに行けないような、まだまだ両親にベッタリ甘えていた頃だったの…

はみがき

朝起きて歯を磨く 朝ごはん食べて歯を磨く 昼ごはん食べて歯を磨く 夜ごはん食べて歯を磨く 毎日繰り返す大切なこと 朝起きておはようと言う 行ってきますと言う 仕事から帰ったらただいまを言う そして、おかえりと言う 寝る前にはおやすみ、と。 全部大切…

水飴

口の中で くっついて 絡まって 歯が抜けそう 喉の奥に 絡みついて 息が出来ない ずっと もう ずっとだ

混沌

混沌として整然とした感情に 押し潰されて 流れていく 貴方を諦めたくない と 口にする事さえ ままならない 今の自分に 貴方を掴む 勇気がない のに 離したくない のに 逃げ出したい のに 逃げたくない 簡単なことだ ただただ 好きなのだ たった一人のあなた…

しがふたりをわかつとき

いつかその時が来たら と君が言う その時が来たら笑って見送ってくれ 君が泣くと哀しいから 君はなんて大馬鹿野郎なのでしょう 君の死は悲しい 君の死は尊い 君の死は愛おしい 君の死は 死にたくなる

あの日の林檎

甘く甘く そして苦い 林檎 初めて私を見つけてもらった 苦くて甘い、居場所をくれた あの日くれた林檎は今もそうっと包んで宝箱 奥底に滲み出す猛毒の林檎の甘い甘い汁 宝箱は甘い猛毒の汁でだんだんくすんでいく じわり じわり じわ り じわ り じわっ 林檎…

いつかのラブレターは燃やしてしまった

いつかのラブレターは燃やしてしまった あんなに想いを込めて書いたのに 燃やしてしまった 耐えられなかったんだと思う 自分の想いの重さに 自分の調子の良さに 一生 というの時間の長さに ビビって引っ込めた左手 覚悟が決まらない それでも 絶えず貴方を思…

眩い朝日に燃え尽きる背中

まだ温かい布団の中、ひとり貴方を思い出す。 燃え盛る炎の中でただただ私を抱きしめている。 体の全てが燃えちぎれて 動かないはずの両手で抱きしめ合う。 途切れる呼吸 繋ぐ互いの口付け 視界を曇らす涙 確かに感じた互いの体温 ひとつの大きな炎となって …

夜明の女

働き蟻の蠢く彼は誰時、工場の鈍色の灯りと白い白い煙に炙り出された美しくも不気味な空には、鋭い三日月が心許なさそうに微笑んでいた。 突然、心を掴まれた気がした。 なぜだか、鋭いあの三日月が寂しそうなあなたの横顔に見えてしまったのだ。 今すぐにで…

目玉焼きになりたい

目玉焼きになりたい 私と2人写る写真はまるで目玉焼き 2人して真白のTシャツ 逃げる笑顔と それでも嬉しそうな笑顔とが くっついてとけあって まるで双子卵の目玉焼き きみときみとは溶け合わず しろみだけが溶け合って一つに なったきがした ただずっと 溶…

こしょこしょばなし

つかまえた 君の瞳のその奥に 隠したはずのキラキラが 零れて落ちて 拾い集めたキラキラの 内緒話が聞こえるよ あまいキラキラ からいキラキラ もっとあまいキラキラと もっともっとあまいキラキラが 私の耳を擽るように 囁いて 今夜も貴方を想って 夢をみる

痛み

呼んでいる 心の奥から 腹の奥から 鈍く鋭い痛みが 私を呼ぶ あなたの言葉に心が痛み あなたの残した心に腹が痛む 繰り返し 繰り返し 鈍く鋭い痛みが 私を呼ぶ それはまるで 月の満ち欠け 潮の満ち干き けれど 満ちてもいなければ 欠けてもいない ただの 痛…

なんにもない

ない ないな ないない いやある やっぱりない そうしてつかれて 泣きじゃくって まぶたとまぶたが くっついて おやすみなさい おはよう 今日もない 昨日もなかった 明日もきっとない どうしてないの ぼくとはなんにも ないんだね

窓の下

シーツのシワ うろこ雲のうらがわ 本当はこっちが表かな 海の岩場のような鋭い雲 濃い朱色から紅色に 遠くでは紫になる空の上雲の上 窓の下には町灯がちかちかぽわぽわ 大きな川や山に沿ってあかりが滲む 街は金色 深緑のカーテン 裾野には夜色の川 ひかりの…

枕にうずめて

どうしようもなく好きで好きで好きだと伝えたい日がある。たまに、それが来て私の心(へや)を荒らしていく。 本当にどうしようもないのだ。 「好きだ」と伝えたくて、「好きか」と問いたくて、我慢して我慢して我慢して我慢してカツ丼を食べる。 食べ終えて、腹が…

もう一度行きたい場所

お題「もう一度行きたい場所」 竹田城にもう一度行きたいです。 2年前、竹田城に雲海を見に行ったんですが、運良く天気にも恵まれ見事な雲海を見ることが出来ました。 あの時とてもとても、山道がとっても大変だった思い出なんですが、それを帳消しにするほ…

小指にキス

右手の小指にキスをする あなたの匂いに心が沈む 匂いに沈むと温かさで眠たくなる それで、とにかくキスをしたくなる 必ず、する 必ず、小指にキスをする なんの意味もないけれど それが私の隠した気持ち きっと溢れて すでに見つかっているんだろうけど 右…

泳いでいたい

これは恋だし愛だ。 恋を終わらせるのは多分愛だ。 愛の始まりは多分恋。 そのどちらともつかないまんなかを 悠々と泳いでいたい。 壊したいわけでも終わらせたいわけでも なにかを始めたい訳でもないのだが いつもなにか、勢い余る。 泣きたくなる。

夏の残り香

まだ少しの夏が 肌の上をなぞる湿度が 私を抱きしめるあの日の君の照れた顔も、眩しい太陽も、 照り返す水面、くすぐる潮風、iPodの音楽 全部あの日、ノートと捨てた捨てたノートの内容だって全部覚えている 何度も何度も読んだから 何度も何度も思い出した…

aで始まってiで終わる

そんな大げさな そんなやっかいな そんな優しさで そんな苦しさで 私を蝕む まるで呪い まるで憎しみ まるで悲しみ まるで、まるで その言葉を飲み込んで 踊らされて ずっこけちゃって そしたらあなたが拾い上げて 結局こぼしちゃう たったひとつの

稲妻

視界の端を小さな稲妻が走り抜けた 小さな、まるでトビウオのような一瞬の けれど強かな光だ その瞬間に思い出す あなたの眼が私を貫いたあの光 あれと似ていた だから急に、苦しくなって 愛おしさが込み上げた 苦しいと気持ちいいは紙一重だった その息苦し…

何度も同じ夢を見る あなたに首を絞められて死ぬ夢 どうせ死ぬなら貴方に殺されたい そうじゃないなら自分で死ぬ そう言って夢の中の私は貴方に 私を殺すことをお願いする あなたは優しいので、私を殺す ごめんねと呟きながら目が覚める 寝覚めは最悪 当たり…

夏の暑さに沈む背中

ふと見上げる あの日もこんな空だった ふと俯く あの日もこの道だった 気がつけば季節は移ろい また夏が来る 夏に、なる 溶けてひとつ、またひとつ、 夏になる

夜の白髪

夕日が沈んで夜が始まる 夜の始まりのいろが見えた 今日は少し天気がわるいみたい 夜空が濁ってる ほんのり深く広がる夜の色 薄く出来たグレーの雲 ふと見上げると 白髪が1本長いのが生えていた しばらくすると 白髪は2本 ほんのすこし ぼうっとしている間に…

君はアイスクリーム

たったひと掬いの幸せ ひと口で頬張って じんわり溶けてゆく 優しくて甘くて 冷たい 幸せ ずっと待ってた 幸せな ひととき こんなに求めて 求められて 私、 私、わたし、 溶けて無くなってしまいそう これじゃあまるでわたしの方が