透明の
私を包むそれは包んでいるというよりもまるで
私を独り占めしているみたいだった。
覗き込んだあなたの顔。
偶然捉えたスマートフォンのシャッター。
レンズ越しにあなたの瞳に映る今にも泣き出しそうな私の顔。
握りしめたあなたの手に伝える「まだ帰りたくない」。
けれど時間は冷酷にしっかりと秒針を刻む。
ただずっと、握りしめられた手から伝わる「まだ帰したくない」に思いを寄せる。
睫毛が震える。
声も震えてきた。
おもむろに手を取り、あなたの手のひらに「 」と書く。
すると今度は右の手の甲に「しるし」を残された。
そうしてさみしくも夢のような時間を描く。
というかすべて、さみしい私の夢である。
夢だったのだ。
きらりと瞬くダイヤのネックレスをのこして。