犬になりたい。
犬になりたい。
犬になって、ただあなたの顔を、目を、口を、手を、足を、その滑らかで吸い付くような、優しくてやわらかい肌を舐めまわすの。
「好き」「愛してる」「あなたが欲しい」そんな、そんな汚らしい言葉であなたを縛りつけて、苦しめるような“人間”ではいたくないの。
犬なら、そんな言葉よりも、もっと大切に、上手にあなたを愛せる気がするの。
許してほしい。
あなたを愛してしまう私を。
許してほしい。
あなたを求める私を。
許してほしい。
あなたを傷つけたいと思う私を。
許してほしい。
あなたを守りたいと思う私を。
ゆるしてほしい。
犬になって、この余計な、不必要な感情を黙っていたい。
だまって、ただあなたを愛していたい。
舐めたい。噛みたい。そして、愛したい。
私の愛の言葉があなたを傷つけ、苦しめ、遠ざけるのなら
この声も身体も、全て棄ててしまいたい。
ただ、犬になって、あなたを愛していたい。
あなたの帰りを、待ち侘びたい。
私が私でなければ、もし犬だったのなら、
あなたの愛をきっと、受けられたのだと思うと、苦しい。
私が、ヒトであるから愛せないのなら、私は犬になりたい。
そうしてひっそりと、あなたのことを想って、愛して死にたい。
犬になりたい。